2009年 10月 30日
日本料理の実力 |
2007年の「ミシュランガイド東京版」に続く、日本の都市を対象とした第2弾のミシュランガイドとして、去る10月16日に「ミシュランガイド京都・大阪版」が発行されました。
3つ星獲得レストランは全部で7店、6店が京都、1店が大阪となっています。
大阪の3つ星1店は少なそうにみえますが、2つ星と1つ星を合わせた大阪の星の獲得レストランの総数は65店になり、ニューヨークの星付きレストランの総数、54店を上回ります。
京都の3つ星6店は、さすがです。
パリの10店、東京の9店に較べると少ないですが、人口比では世界一でしょう。
実は日本料理は、フランス料理に大きな影響を与えています。
フランス料理の名実ともにナンバー1のシェフは、ポール・ボキューズという人で、彼はリヨンでその名を冠したレストラン「ポール・ボキューズ」を経営していますが、
このレストランは40年連続で、ミシュランガイドの3つ星を獲得しています。
ポール・ボキューズは1970年代に新しいフランス料理、「ヌーヴェル・キュイジーヌ」を発案し、普及させたことで知られています。
この新しいフランス料理、「ヌーヴェル・キュイジーヌ」とはどんな料理か、一口でいうと、日本料理化したフランス料理のことです。
それまでのフランス料理は量が多く、ドバーッと皿に盛られてあって、その上にこってりしたソースがかかっているのが普通だったのですが、
ポール・ボキューズは、料理の量を減らし、日本の懐石料理みたいに器や盛り付けに凝った、素材の味をいかした薄味のフランス料理を作り出したのです。
それが折からのヘルシー指向の波に乗ってフランス人に受け入れられ、あっという間にフランスを席巻し、フランス料理の新しい主流に躍り出たのです。
ポール・ボキューズは、1970年代に料理研究家の辻静雄に招かれて来日し、吉兆や千花など有名日本料理店で懐石料理や京料理を味わい、
その料理法や盛りつけに着想を得て、この新しいフランス料理を考案したといわれています。
その結果、フランス料理が日本料理化したわけですが、私はフランス料理を学んだ日本人の料理人の影響もあったのではないかと考えています。
70年代には、フランスの有名レストランで、日本人の料理人が働いていない店は一軒もないといわれるほど、多くの日本人の料理人がフランスで修行していたのですが、
彼らの多くは修行を終えて日本に戻ると、日本でフレンチレストランをオープンしました。
しかし、日本人の客は、ドバーッと量が多く、味がこってりした伝統的なフランス料理は受け付けません。
そこで彼らは日本人の口に合うように、量を減らし、味もさっぱりとした薄味にし、さらに料理を目でも味わう日本人のために器や盛り付けに凝った、日本料理風のフランス料理を作り出したのです。
日本人って、海外から料理を輸入するとき、日本人の味覚や感覚に合わせて必ず日本風にアレンジするんですよね。
このような日本風のアレンジをおこなった日本人のフランス料理のシェフたちも、「ヌーヴェル・キュイジーヌ」の誕生に手を貸したのではないかという気がします。
「フランス人に日本料理がわかる筈がない、フランスのタイヤメーカーが日本料理店を格付けするなんて傲慢だ!」
などとミシュランガイドを批判する人もいますが、
日本料理の凄さを一番よく理解しているのは、日本料理の影響を受けたポール・ボキューズのようなフランスの料理関係者で、
彼らの日本料理に対する高い評価が「ミシュランガイド日本版」の星の数に表れていると思いますね。
by jack4africa
| 2009-10-30 00:09
| 日本と日本人