2010年 02月 16日
チューブ |
パリで学校に通っていたときに、夏休みを利用してロンドンに行って、2ヶ月ほど滞在したことがあります。
ロンドンでは、以前、書いたように(「ジョーズに狙われた話」を参照)、アールス・コートにあるゲイパブにちょくちょく行ってましたが、正直いってモテませんでした。
パリでも別にモテたというほどではなかったのですが、パリには私の好きなアラブ人や黒人が沢山、住んでいて、誘うと直ぐに乗ってきたし、白人のフランス人にもけっこう誘われて、相手に不自由はしなかったのです。
ところが、イギリス人は、外国人とういうか、有色人種にはそれほど興味がないみたいで、ロンドンには黒人やインド人、中国人など有色人種がけっこう、住んでいるにもかかわらず、
ゲイパブでは、彼らの姿を見かけることは殆どありませんでした。
偶にいても、私同様、イギリス人にはあまり相手にされていない感じで、それがわかっているので、最初から近寄らなかったのかもしれません。
無理して行っても、私みたいにジョーズみたいなバケモノに言い寄られるのが関の山だし・・・
それでも、ちょくちょくそのゲイパブに行っていたのは、ロンドンではなにもしてなくて、暇だったからです。
その晩も、パブに出かけたものの、収穫はなく、一人寂しく帰りの地下鉄に乗ったのですが、私が車両に乗り込むと、直ぐに30歳くらいのイギリス人の男が乗り込んできました。
彼はパブで私を見かけて、後を追いかけてきたといい、
「どこから来たのか?」
「ロンドンでは何をしているのか?」
などといろいろ訊いてきます。
パリで学校に通っていて、夏休みを利用してロンドンに遊びに来ているというと、
「パリはとても洗練されていて、美しい都市だ」
といかにもパリをよく知っているかのような口振りです。
かなりくたびれたジーンズにポロシャツといういでたちでしたが、話す言葉から労働者階級ではなく、ミドルクラスであることがわかりました。
特別、イケメンというわけではなく、かといってそれほどブオトコでもなく、いかにもジョンブルといった向こう意気の強そうな面構えをしていました。
「これから、俺のアパートに来ないかい?」
彼はいいました。
私は黙って返事をしませんでした。
誘ってくれるのはウレシイけど、彼は私には年を取り過ぎているのです。
当時、私は20歳そこそこで、いつも、同い歳くらいの若い男とばかり遊んでいたので、30歳の男は私から見てもうオッサンだったのです。
かといって、むげに断る気になれなかったのは、前述したとおり、ロンドンではモテていなかったせいで、せっかく誘われて断るのもなんとなく勿体ないという気がしたからです。
彼はそんな私の様子を見て、脈があると思ったのか、
「君のその髪、とても素敵だよ」
などと口説いてきます。
私はそのとき、髪を長く伸ばして、電気こてを使ってカールさせていました。
パリの街でフランス人の若い男の子が電気こてで前髪をカールさせているのを見てカッコ良いと思って、自分も電気こてを買ったのですが、日本人の剛毛では、思うようにカールさせることができません。
それがイギリスに来てみると、フランスとは電圧が違うのか、簡単に髪をカールさせることができるようになったのです。
油断していると、こてで挟んだ髪が焼けて白い煙が出てくるので注意する必要があったのですが、面白いようにカールがかかるので、いっぱい巻き毛を作っていたのです。
その苦心のヘアスタイルを褒められたので悪い気はしなかったのですが、それでもまだ彼のアパートに行く気にはなれませんでした。
やっぱり、彼が十分に若くないことがネックでした。
当時の私は、相手の年齢に関しては、中々、妥協しなかったのです。
そうこうする内に、彼が降りる駅に着いて、彼は先にプラットフォームに降りたのですが、私はまだ彼についていくかどうか迷っていて、車両の中に留まったままでした。
そんな私に向かって、彼がプラットフォームから大声で叫びました。
カモン、ベイビー!!
その言葉を聞いた瞬間、思わず身体が反応し、一歩、前に踏み出そうとした途端、
バッシャ~~~~ン!!
ドアが閉まって電車が発進し、プラットフォームの彼の姿はあっという間に視界から消えていったのでした。
「世界OTOKO紀行」
by jack4africa
| 2010-02-16 00:12