2010年 06月 20日
カンボジア熱々旅行(9) |
☆ 別れのとき
翌日、またバスでプノンペンに戻り、アジア・ホテルにチェックイン。
フロントの女性は私のことを覚えていて、前と同じ部屋のキーをくれました。
さらに荷物を運んでくれたボーイも前回と同じシュン君!
バス・チケットのことをまだ根に持っているのか、私と目を合わせようとしない彼に明るく、ハーイ!と挨拶して、積極的に話しかけていたら、徐々に機嫌が直り、最初、会ったときと同じ快活な男の子に戻ってきました。
明日のフライトで帰国するといったら、空港まで9ドルで車を手配できるといいます。
バス・チケットと同様、彼に手配を頼んだら、彼の懐にコミッションが入るのでしょう。
バス・チケットでは彼を裏切った形になっただけに、今度は必ず彼に頼んで彼にコミッションが入るようにしようと思い、OKの返事をしました。
そして、荷物を部屋に運び終わった彼にチップを5ドル、渡しました。
チップの相場は1ドルで、なぜ5ドルも渡したかというと、彼がバス・チケットの手配をしたならば得られたであろうコミッションの額を補填したかったのと、もうひとつ、やはり下心があったからです。
彼は私の下心を敏感に嗅ぎ取ったようでした。
また私を避けるようになりましたから(――)
翌日、ホテルをチェックアウトした私は、荷物を持ってロビーのソファに座っていました。
「空港に行かれるのならタクシーの手配をしますが」というほかのボーイたちの誘いを無視して、私はシュン君が私のところにやってくるのを待っていました。
彼はロビーにいて、私がロビーのソファに座っているのを知っている筈です。
ところが彼は寄って来ないのです!
やっぱり私を避けているのです。
避けている理由は、前回とは別でしょうが(笑)
しびれを切らして手招きすると、おそるおそるといった感じで近づいてきます。
「空港へ行くので、車を呼んで欲しいんだけど」
「かしこまりました。9ドルで冷房付きの車をご用意できます」
馬鹿丁寧に答えます。
「じゃあ、お願いするわ」
「お金はいま私に払っていただく必要があるのですが・・・」
わかってるわよ、そんなこと!そのためにあんたを指名してるんでしょうが!
なんだかイケメンの新入社員にちょっかい出して、拒否られて、頭にきて、そのイケメン社員をいびっている女上司にでもなった気分です。
10ドル札を渡すと彼はそれを恭しく受け取り、どこかに行ってしばらくしてからお釣りの1ドル札をもってきて恭しく私に差し出します。
「お釣りはいらないわ、とっていて」といいたかったのですが、そんなことをいってまたへんに勘ぐられて警戒されるとマズイので、黙って受け取りました。
シュン君は私の荷物を持つと、ホテルの前に駐車してあったプノンペンではめずらしいピカピカの新車に私を案内し、私が車に乗ると、運転席に乗ってきました。
なんとシュン君が運転して送ってくれるのです!
「これ君の車?」
「まさか!ホテルの車ですよ。ボクはビンボーだから車なんて持てません」
「君、年齢はいくつ?」
「24歳です」
「彼女はいるの?」
「・・・・・・・」
そりゃ、いるわよねぇ。こんな可愛い男の子、まわりの女の子がほっとくわけないでしょう・・・
そう自分に言い聞かせて、窓の外を見ると、西の空にきれいな夕焼けが拡がっていました。
しばらくボーッとして夕焼けを眺めていたら、シュン君が、
「あなたはまたプノンペンに来られますか?」
と訊いてきました。
「さぁ・・・まだわからないけど・・・」
「もし、また来られるときは、是非、アジア・ホテルに泊まってください。メールをいただければ空港まで出迎えに行きます」
とかなんとかいって、また忘れるんじゃないの?といいたかったけど、せっかく彼が努力して話しかけてきているのを茶化すのはよくないと思い、「そのときは連絡する」と答えました。
それから「アンコールワットは素晴らしかった」とか「来月になると雨が増える」などとあたりさわりのない話を続けました。
会話はちょっとぎこちなかったけど、彼が私に素っ気ない態度をとったことを反省していることがわかりました。
実際、たとえこちらに下心があったにせよ、5ドルもチップをくれた客に対してあの態度はないだろう、という彼の態度でしたから。
私に口説かれるところを想像してゾッとなったのでしょうが、ホテルのボーイをやっていて、しかもこんな美少年だったら、その手の誘いはしょっちゅうある筈で、それを適当にあしらうのもボーイの仕事のうちです。
それをあんなに大袈裟に反応するなんて、ちょっとナイーブすぎますヨ。
まぁ、そこが彼の可愛いところでもあるのですが・・・
そうこうしているうちに車は空港に着き、シュン君は私の荷物をカートに載せると、
「またプノンペンにいらっしゃるときは是非、ご連絡ください。車でお迎えに参ります」
と繰り返し、私は、
「必ず、そうする」
と答え、笑って握手して別れたのでした。
本日のテーマソング:
続く
カンボジア熱々旅行
by jack4africa
| 2010-06-20 00:02