2010年 10月 11日
タイ&ラオス周遊(2) |
☆ 出発
バンコク、ホアランポーン駅のプラットフォーム3番、ノンカイ行き夜行急行 69便は、20時の定刻きっかりに音もなく走り出した・・・
と、宮脇俊三の鉄道旅行記みたいに書き出したいところですが、実際には、ノンカイ行き急行列車は、出発時刻の午後8時を過ぎても中々、出発しようとしません。
このノンカイ行きの急行列車、わざわざ一等寝台車を予約したのですが、昔、乗ったことのある南本線や北本線の寝台車とはまったく違っていて、それでまずガッカリしました。
以前、私が乗った一等寝台車のコンパートメントは、壁や扉が木製のレトロな雰囲気の広いコンパートメントで、一室にベッドは一つしかなく、一人でコンパートメントを占領することができました。
ところが、今回のノンカイ行き夜行列車の一等寝台車のコンパートメントは非常に狭く、ベッドは2段式になっています。
つまり、一等車なのに1つのコンパートメントに乗客が2人押し込まれるようになっているのです。
さらに壁や扉は、最近、日本のマンションのバスルームの壁材なんかによく使われている、ライトグレーの強化プラスチック製のパネルで出来ていて、
その実用一点張りの無味乾燥なデザインは、以前、乗ったレトロな寝台車と較べてまったく情緒ありません。
食事を座席まで運んでくれるサービスは、以前と変わりなく続いているみたいで、列車に乗り込んでしばらく経つと、給仕が夕食の注文を取りにきましたが、夕食はすでに済ませていたので、ビールだけ頼みました。
「朝食は当然、取るだろう?」みたいなことをいうので、翌朝の朝食も頼んだのですが、これが後で憤慨のタネになるとは想像もしませんでした。
チケットを見ると、私のベッドは上段になっていて、相部屋になる筈の下段の乗客は、出発時刻をとうに過ぎているのにまだ姿を現していません。
もしかしたら乗車をキャンセルしたのかもしれない、そうなったらこのコンパートメントを自分一人で独占できる、と期待したのですが、
ビールを持ってきた給仕に訊くと、下段の乗客は友人のいる別のコンパートメントにいて、寝るときはこのコンパートメントに入ってくるだろうとのこと。
列車は、中々、出発せず、10時近くになっても、まだ停車したままです。
ビールの追加の注文を取りにきた給仕に、
「いったい、いつになったら出発するんだ?」
と訊くと、
「そんなこと俺に訊かれてもわからない。いつ出発するかなんて気にしないで、ビールを飲んで寝てたらいい」
といわれてしまいました。
実際、それからまもなくして乗務員がやってきて、ベッドを組み立てて、ベッドメーキングをして出ていったので、上段のベッドに上って寝そべっていたら、いつのまにか寝入ってしまいました。
列車が走り出した音と下段の乗客がコンパートメントに入ってくる音を夢うつつで聞きましたが、そのまま眠り続けて、目が覚めたら朝の5時。
しばらくすると窓の外が明るくなり、タイの田舎の単調な田園風景が目に入ってきました。
下段で寝ている男は30歳くらいのタイ人でしたが、趣味ではなかったので、胸はときめきませんでした。
彼は、朝の7時過ぎ、列車がコーン・ケーンに着いときに降りて行きました。
時刻表ではコーン・ケーン到着は午前5時5分で、2時間以上、遅れていることになります。
そのうち乗務員が入ってきて、ベッドを座席に直し、給仕が朝食を持ってきました。
昨晩、朝食の注文を取りにきたとき、「コーヒーにするか、紅茶にするか?」と訊かれて「紅茶」と答えたのにコーヒーを持ってきます。
このへんの完璧さをタイ人に求めるのは無理だとわかっているので、黙ってまずいコーヒーを飲みましたが、あとで料金を請求されて耳を疑いました。
昨晩のビールと朝食で合計300バーツだというのです。
内訳を訊くとビールが150バーツで、朝食が150バーツだといいます。
1バーツ=約3円の換算レートで計算するとビール1本が450円ということになります!
これでは日本と変わりありません。
あと薄いオムレツに粗チンの先っぽを切り取ったような小さなウィンナーソーセージ、ぱさぱさのトーストにまずいコーヒーの朝食が450円もするのも納得できません。
松屋の390円のソーセージエッグ朝定食の方がなんぼかウマイです。
昔、夜行列車で旅行したときは、もっと手頃な値段で、豪勢な夕食を楽しめたと記憶しているのですが、タイも世知辛くなったものです。
終着駅、ノンカイに着いたのは2時間半遅れの午前11時。
当然のことながら、JRみたいに遅れに対する謝罪の車内アナウンスはありません。
というようなわけで、久しぶりのタイ鉄道の旅は、期待外れに終わってしまったのですが、タイの鉄道は現在、飛行機とバスとの競争で劣勢に立たされて、公共輸送機関としての地位が低下しているという印象を受けました。
飛行機は鉄道よりも速いのはもちろんですが、最近は格安航空会社が登場してきて、タイ国内外の主要都市間を格安の料金で運行していると聞いています。
バスの方は、バス会社間の競争が激しく、鉄道よりも安い料金で速く走る、快適なリクライニングシート付きのバスが多数、走っているそうです。
その結果、鉄道は乗客を飛行機やバスに取られて衰退しているみたいです。
実際、車輌も老朽化しているし、線路のメンテナンスもよく行われていないのか、以前と較べて振動が激しくなっているような気がします。
また最近、タイでは鉄道の転覆事故が頻発しているそうです。
鉄道ファンとしては残念なことですが、この劣勢を取り戻すには、日本みたいに民営化するしかないと思いますネ。
続く
「2010 タイ&ラオスの旅」
本日のつぶやき:
中国人の民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏のノーベル平和賞受賞に対するアグネス・チャンの感想を聞いてみたい。
by jack4africa
| 2010-10-11 00:07