2007年 12月 07日
ヤマトタケル |
日本で一番、最初に女装した男性はだれでしょう?
記録に残っている限り、それはヤマトタケルノミコトです。
ヤマトタケルノミコトは、ヲウスノミコトと名乗っていたときに、父である景行天皇に命じられて、九州の豪族で大和朝廷に服従することを拒んでいるクマソタケル兄弟を征伐しに行くのですが、そのとき、ヲウスノミコトは女装して兄弟に近づくのです。
古事記によると、クマソタケル兄弟の館で宴会があると聞いたヲウスノミコトは、少女のように髪を結い、叔母さんに借りた女性の衣服を身につけて少女の姿になって、女たちの中に紛れ込んで、兄弟が宴会を開いている部屋に入ります。
クマソタケル兄弟は部屋に入ってきた女装のヲウスノミコトを見て、可愛らしい女の子だと思い、自分たちの間に座らせます。
兄弟は、ヲウスノミコトが女装していることを見抜くことができず、本物の美少女だと信じ込んだわけです。
当時、十代の少年だったと思われるヲウスノミコトは、女装が似合う美少年だったのでしょう。
そうして油断をさせておいて、宴たけなわになったとき、ヲウスノミコトは、懐より剣を取り出して、クマソタケル兄の衣の衿を掴み、彼の胸に剣を刺し通します。
弟のクマソタケルは、それを見て恐れをなして逃げ出しますが、ヲウスノミコトはそれを追って部屋の階段の下まで行って、タケルの背中の皮を掴んで尻に剣を刺し通すのです。
尻に剣を刺すという行為は、アナルセックスを連想させますが、尻に剣を突き刺されたクマソタケル弟は、「その刀を動かさないでください。申し上げたいことがあります」といいます。
クマソタケル弟は苦しい息の中から「あなたはいったい、どういうかたですか」と尋ね、ヲウスノミコトが自分は朝廷に服従しないクマソタケル兄弟を征伐しにきた天皇の皇子であることを明かすと「なるほど、そういう方だったのですか」と納得します。
そして「九州には自分たち兄弟以上に強い人間はおりません。私たちよりさらに猛々しく強いあなたに私たちの名前である「タケル」を奉ります。今後はヤマトタケルノミコトと名乗ってください」といって息を引き取るのです。
自分を殺そうとする人間に自分の名前を与えるという行為は、奇妙に思えますが、この「タケル」という名前には、「猛々しく強い」という意味があるようで、自分たちよりも強いヲウスノミコトこそ「タケル」を名乗るのにふさわしい人間であるとクマソタケルは考えたのでしょう。
もしかしたら、クマソタケルは、強くて美しいヲウスノミコトに惚れ込んで、こんな美少年の勇者に殺されるのなら本望だと思ったのかもしれません。
ロマンチック(プラトニック)な少年愛を許容したイスラム神秘主義の修行僧たちは、しばしば美少年に殺される自分の姿を想像して恍惚となったそうですが、美少年好きの私には、そのようなマゾヒスティックな妄想が官能を刺激するだろうことが、なんとなく理解できます。
実は私も、ブラジルで凄い美少年と出会って、死ぬような思いをしたことがあるのですが(^^;
いずれにせよ、この「猛々しく強い」という意味をもつ「タケル」という名前を奉られた人間が、女とみまごうような美少年であることに、日本人に特有のヒーローのイメージが現れていると思いますね。
西洋の英雄は、ギリシャ神話に登場するヘラクレスをはじめとして、筋骨逞しいマッチョが多いのですが、日本では女と見まちがえるような外見をもつ少年や優男がヒーローになり、大男のマッチョをやっつけるのです。
例えば、日本人に人気のある歴史上のヒーロー、源義経は牛若丸と名乗っていた少年時代、京の五条の橋の上で大男の弁慶と闘いますが、長い薙刀を振りまわす弁慶を、ここと思えばまたあちら、前や後ろや右左に飛びのいてかわして翻弄し、最後に弁慶に「参りました」といわせるのです。
実際の牛若丸が美少年だったかどうかは知りませんが、日本人の美意識からいうと、牛若丸は女と見まごうような美少年でなければならないはずです。
話は変わりますが、以前、テレビで、ある日本人のバスケットボール選手が、アメリカのプロバスケットリーグNBAの入団テストを受けている映像を見たことがあります。
その日本人選手は身長が175cmくらいしかなく、平均身長が2メートルに達するような大柄な黒人選手の中に入るとまるで子供にしか見えませんでした。
そんな小柄な彼が、大柄な黒人選手の間を縫うように敏捷に走り回って、彼らを翻弄しているのをみて、牛若丸を連想したものです。
本人は意識していなかったでしょうが、少年のような彼が大男を手玉に取るその姿こそ、日本人が最も好むヒーローのイメージなのです。
反対に中国からは「歩く万里の長城」と呼ばれる2メートルを優に超える長身の大男がNBAに入団したそうで、これはこれで非常に中国的だと思いました。
「三国志」なんか読むと、身の丈、8尺とか9尺とか、大男の英雄ばかり出てきますからね
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by jack4africa
| 2007-12-07 00:13