2009年 04月 21日
ミッドナイト・エクスプレス |
制作:1978年、アメリカ
監督:アラン・パーカー
原作:ビリー・ヘイズ / ウィリアム・ホッファ
脚本:オリバー・ストーン
音楽:ジョルジョ・モルダー
出演:ブラッド・デイビス
ランディ・クェイド
ジョン・ハート
この映画は、トルコを旅行したあと、アメリカにハッシーシ400グラムを持ち帰ろうとして、イスタンブールの空港の荷物検査で見つかって、トルコの刑務所に収監されたアメリカ人青年、ビリー・ヘイズが、
麻薬不法所持と密輸の罪で懲役30年の刑を宣告されたあと、刑務所を脱獄して無事アメリカに生還するという実話を映画化したものです。
主人公のビリー・ヘイズ役は、この映画で抜擢された若手俳優、ブラッド・デイビスが演じています。
トルコをはじめとする中東やインド、東南アジアでは、ハッシーシやマリファナなどのソフトドラッグが容易に入手できることから、バックパッカーの若者が、軽い気持ちで手を出して捕まる話はよく聞きます。
と他人事のように言ってますが、実は私もハッシーシを1キロ、トルコから持ち出そうとしたことがあります。
もう何十年も前のことで、時効になっていると思うので白状しますが・・・
アフガニスタン第3の町、ヘラートのバザールで、ヨーロッパに持って行けば、買値の100倍の値段で売れると麻薬商人に言われ、アフガニスタン製のジャムの缶詰を10ドルで購入したのです。
缶にはアフガニスタン製のジャムのラベルが貼ってあるのですが、中味はハッシーシだということでした。
トルコからいったんヨーロッパ域内に入ってしまうと、国境での荷物検査など殆ど無きに等しいので、ヨーロッパへの麻薬の密輸を水際で阻止するためにトルコ出国に際しての税関検査は非常に厳しいと聞いていました。
実際、一緒に旅行していた欧米人のバックパッカーたちは、税関で厳しい取り調べを受けていたのですが、私を検査したトルコ人の税関吏は、私の身体をなめるように見て好色そうな薄笑いを浮かべながら、
Are you a boy or girl ?
と聞いただけで、荷物を開こうともしなかったので拍子抜けしてしまいました。
そのとき私はアフガニスタンで買ったアフガンコートと呼ばれる羊の毛皮のコートを着て、頭にはやはりアフガニスタンで買った狐の毛皮でできた帽子をすっぽりと被っていて、小柄で色白だったので女の子と間違われたのかもしれません。
オネエ丸出しだったので女の子に見えたという説もありますが・・・
いずれにせよ、好色なトルコ人税関吏が私の色香(?)に迷ったお陰で、私は税関検査を無事、すり抜けることができたのです。
もしあのとき、税関でハッシーシを隠し持っていることが見つかっていたら、いったいどうなっていただろうと考えることがあります。
たった400グラムのハッシーシしか所持していなかったビリー・ヘイズが30年もの懲役刑に科せられたことを思うと、1キロ持っていた私なんか、終身刑に科せられていたかもしれません。
もしそうなってたら、トルコの刑務所で囚人とヤリまくってたでしょうね(笑)
映画では、ビリーがトルコ人のサディストの刑務所長にレイプされそうになるシーンが出てくるのですが、この挿話は欧米人がトルコ人にたいして抱く「野獣のような性欲を持つ残忍なトルコ人」というステレオタイプの偏見を反映していると思いますね。
トルコの刑務所で、そのようなことがまったくないとは思いませんが、同じようなことは世界中どこの刑務所でも起こっているんじゃないでしょうか。
イラクのアブグレイブ刑務所でのアメリカ兵によるイラク人捕虜にたいする性的虐待事件はまだ記憶に新しいところですし、
日本でも、愛知県だったかどこかの刑務所で、看守が言うことをきかない受刑囚の肛門にホースを突っ込んで高圧の水を注入して、内臓破裂の重症を負わせたという新聞記事を読んだことがあります。
実際、この映画の公開後、ビリー・ヘイズの原作が日本で翻訳、出版され、私も読んだのですが、原作では刑務所長にレイプされるなどという話は出てきません。
脱獄の方法も映画に描かれているようなドラマチックなものではなくて、たしか脱獄しやすいエーゲ海の島にある刑務所に移送されて、そこからボートで脱獄したという話だったと思います。
反対に映画では、同じくドラッグで捕まった同房のスウェーデン人と一緒にシャワーを浴びているときに、このスウェーデン人に誘惑されて拒絶するというシーンが出てくるのですが、
原作では、刑務所にいる間、このスウェーデン人とホモセックスをヤリまくったことを告白しています。
ビリーはホモではなく、トルコもアメリカ人のガールフレンドと一緒に旅行しているのですが、女っけのない刑務所暮らしで溜まった性欲を囚人仲間相手に発散していたようです。
ビリー役を演じている俳優ブラッド・デイビスは、1991年にエイズでなくなっています。
たしかそのとき彼は結婚していて、奥さんが「夫は手術のときの輸血でエイズに感染した」という意味の声明を発表したのを覚えてます。
しかし、彼はファスビンダー監督の『ケレル』でも、フランコ・ネロの士官に犯される水兵の役を演じていますから、もしかしたらそのケがあったのかもしれません。
小柄で引き締まった身体に、少年っぽさが残る甘いマスクはホモが好むタイプだし、上目遣いに哀願するように相手を見つめる表情は母性愛だけでなく、Sの嗜虐性も刺激するような気がします。
ジョルジョ・モルダーのむせび泣くようなテーマ音楽に合わせて、イスタンブールの刑務所での、けだるくも、やるせない日々が描かれるこの映画、
まかり間違えば自分もこうなってたかもしれないという想いもあって、私には特別の思い入れがある映画です。
私がヨーロッパに持ち込んだハッシーシですが、所持していることが見つかるとヨーロッパでも何十年もの懲役に処されられると聞いて怖くなって、泊まっていたホテルの近くの池に缶詰のまま捨ててしまいました。
今思うと、あれはハッシーシなんかではなくて、本物のジャムの缶詰だったのではないかという気もするのですが・・・
MIDNIHT EXPRESS TRAILER
by jack4africa
| 2009-04-21 00:06
| 世界の映画&音楽