2006年 09月 05日
未帰還日本兵 |
今年の5月に亡くなった映画監督の今村昌平が、今から30年ほど前、太平洋戦争が終わったあとも、日本に帰国せずに、タイやマレーシアなどに残留した日本兵をテーマにしたテレビのドキュメンタリー番組を監督したことがあります。
現地に直接、行って、元日本兵を探し出して、インタビューするという番組でしたが、番組に登場した元日本兵は、その頃、大体、50代後半といったところで、現地の女性と結婚していて、完全に現地人化していました。
中には、日本語を忘れている元日本兵もいたくらいです。
彼らの多くは戦後、タイやマレーシアで「医者」として働いていたのだそうです。
医者といっても医師免許を持つ正式の医師ではなく、軍隊で衛生兵などをやっていて、傷の手当の仕方とか、薬の種類を覚えた程度だったそうですが、その程度の知識でも、当時の東南アジアの田舎では医者として働くことができたのだそうです。
彼らは、決して豊かとはいえないけれど、多くの子供や孫たちに囲まれて、それなりに安定したシアワセな生活を送っているように見えました。
ところが、なぜか私は彼らを見ていて、可哀想に思えてしょうがなかったのです。
なぜ彼らが可哀想に思えるのか、自分でも不思議でしょうがなかったのですが、数年前に、今村昌平が日経新聞で「私の履歴書」を連載していたとき、当時の撮影旅行を回顧して、彼がタイやマレーシアで出会った未帰還日本兵は全員、被差別部落出身者だったと書いているのを読んで、その理由がわかったような気がしました。
彼らが日本に帰国しなかったのは、それなりの理由があったのです。
私が彼らから感じたのは、帰るべき故国に帰ることのできない事情を持つ故国喪失者に特有の悲しみだったのかもしれません。
by jack4africa
| 2006-09-05 11:38
| 海外生活&旅行

