2006年 09月 29日
レイナルド・アレナス 「夜になるまえに」(2) |
カストロ政権下で迫害を受けたキューバの同性愛者の作家、レイナルド・アレナスは1980年にアメリカに亡命するのですが、彼にとってアメリカでのホモセックスは退屈で飽き足りないものでした。
キューバにいたとき、アレナスのセックスの相手はつねに自分とは対照的なタイプ、自分のことをホモだとは考えない、相手の尻にひたすら自分のモノを突っ込むことしか考えない、若い兵士のようなタイプでした。
そういう男っぽい「ノンケ」に思いっきりバックを掘られることが彼の望むところだったのです。
ところが、アメリカでは、同性愛の世界にカテゴリ分けができていて、ゲイはゲイ同士でセックスし、片方が相手のモノをしゃぶると、次にしゃぶられた人間が相手のものをしゃぶり返す、というようなことが正しいセックスのやり方とされていたのです。
そんなセックスのどこが面白いのだろう、人間は本来、セックスの相手に自分と対照的なタイプを求めるのではないか、とアレナスは反発します。
アメリカのゲイリブの運動は、同性愛者に多くの権利をもたらすことになったけれど、その代償として、ホモがウケ役はやらないが、タチ役はやるバイやノンケの男とセックスできる可能性を排除してしまったのではないか、とアレナスは疑問を呈しています。
アレナスが男とのセックスを満喫していた60年代のキューバで、彼が相手にした男には殆ど妻やガールフレンドがいましたが、そういう男たちは彼とのセックスを心から楽しんでいた、ときには妻やガールフレンドとのセックスよりも、彼とのセックスの方を楽しんでいた、とアレナスは断言しています。
アレナスは、彼らの妻やガールフレンドがやリたがらない、あるいはやッたとしてもおざなりにしかやらないフェラを、彼らの満足の行くまで十分にやってやったからです。
そういう妻やガールフレンドのいる男たちの中にはセックスではウケ役をやりたがる男もいたといいます。
アレナスはセックスではもっぱらウケ役でしたが、タチ役ができないわけではなく、男らしい「ノンケ」を犯して、彼らが喜ぶ様子を見るのは嫌いではなかったといいます。
そういう受け身も含むアレナスとのセックスを楽しむ男たちが、家庭では申し分のない夫で、立派な父親だったというのです。
キューバにはゲイクラブやゲイビーチのような同性愛者専用の場所や区域は存在せず、みんな一緒に遊んでいた。ホモとノンケを区別する仕切りがないので、男と関係を持つためにホモになる必要がなかった、とアレナスはいいます。
男同士のセックスは特別な行為ではなく、日常的に行なわれる普通の行為でしかなかったというのです。
もちろん、キューバにはホモ好きのホモもいて、そういう連中はホモ同士で付き合ったり、一緒に暮らしていたそうです。
しかし、それと同時にノンケ好きのホモが、自分と暮らしたがっているノンケ男を見つけて、彼が女ともセックスする自由を認める代わりに、一緒に暮らすこともできたというのです。
重要なのは、アメリカのゲイが主張するように同性愛者同士がセックスすることではなく、自分の欲望を満足させてくれる相手を見つけることで、アレナスの場合は、その相手がノンケだったのです。
しかし、キューバよりも文明が進んでいるはずのアメリカでは、一般社会のホモフォビアが強いために、同性愛者が自由にホモセックスを楽しむためには、同性愛者だけが集まって排他的なゲットーを作って暮らすしか方法がなく、その結果、アメリカのゲイ社会は陰険ですさんだものになっている、とアレナスは指摘しています。
アラブ・イスラム世界で暮らした経験のある私には、このアレナスの言葉が本当によく理解できます。
若いイケメンを見つけたら、彼がホモであるかノンケであるかなどといちいち詮索することなしに口説くことができる。そうしてそういう「ノンケ」の男たちが喜んで相手になってくれて、自分とのセックスを心から楽しみ、満足してくれる。
そんな素晴らしい経験をしたあと、日本に帰って、自分と同じようなオネエしかいない二丁目のゲイバーなどで相手を探すことが、いかに空しく味気ない行為に思えたことか・・・
ゲイリブの連中はゲイの権利を求めて闘っているそうですが、私はそんなもん、ちっとも欲しくはありません。
私が望むのは、ノンケとセックスする自由です。
人間をホモとノンケに区別して、ホモはホモとしかセックスできない、ノンケは女としかセックスできない、などと勝手に決めつける、狭量で排他的なゲイリブの思想とは無縁の、ホモとノンケが仲良くセックスできる自由な社会になって欲しいのです。
そのような自由な社会は、60年代のキューバには存在しましたし、80年代初めのエジプトにも存在しました。
さらにいえば、江戸時代の日本にも存在したのです!
読書ノート
by jack4africa
| 2006-09-29 00:15