2006年 10月 13日
ホンネとタテマエ |
昨年の7月にイランで10代の少年2人が、同性愛行為を行った罪で公開処刑されたというショッキングなニュースが報じられ、欧米のゲイリブ団体から非難の嵐が巻き起こったときに思い出したのが、
1979年にイランで宗教指導者ホメイニが主導するイラン革命が起きたときに知り合いのオランダ人から聞いた話でした。
そのとき、私はエジプトに住んでいたのですが、そのオランダ人は「お仲間」で、オランダの新聞のカイロ特派員をしていました。
彼はエジプトに赴任する前にイランの首都テヘランで特派員として働いていて、イランの事情に詳しく、ペルシャ語にも堪能だったことから、
ホメイニの革命が起ったときに、本社の指示で革命直後のイランに取材に行ったのです。
で、帰ってきていうには、「革命前と何も変わってなかった!」
ホメイニ体制下でも、革命前と変わらず、酒も男の子も簡単に手に入ったというのです。
アラブ世界にある程度長く住んで、アラブ・イスラム社会のホンネとタテマエの落差の大きさについては日頃から理解しているつもりでしたが、この話だけは俄かに信じる気にはなれませんでした。
当時、欧米のゲイリブ団体は、ホメイニ体制下では同性愛者が迫害されていると声高に非難し、実際に同性愛者であることで迫害を受けるという理由で、欧米諸国に亡命を申請するイラン人まで出ていたのです。
しかし、いまでは、そのオランダ人のいっていたことは本当だったのではないか、という気がしています。
まず第一に、彼が嘘をつかなければならない理由はみあたりませんし、アラブ・イスラム圏で生活した経験からいって、革命が起ったくらいでホモセックスの習慣がなくなるとは到底、思えないからです。
イスラムの教えでは一応、同性愛行為を禁止していますが、イスラム法によると、ホモセックスを行なったことを立証するためには、4人の目撃証人が必要になるのだそうです。
通常、性行為は密室で行われることを考えると、この目撃証人を4人を集めるという要件を満たすのは、現実にはかなり難しいというか、ほとんど不可能でしょう。
このことは事実上、合意の上で行なわれるホモセックスは、罪に問われないことを意味します。
イランで少年2人が処刑された本当の理由は、詳しい情報が不足していて、いまだに不明です。
唯一、私が信じられるのは、弁護士を通じて発表されたという「ホモセックスは友達みんながやっていることだから、罪だとは思わなかった」という少年の弁明です。
実際、イランも含めて、アラブ・イスラム圏では、殆どの男が隠れてホモセックスを楽しんでいるのは公然の秘密ですし、もしホモセックスを行なったことが罪になるのであれば、殆どの男が罰せられることになります。
2000年に同性愛者であるために、故国イランに戻れば迫害されるという理由で、日本で亡命申請を行なった在日イラン人男性にたいして、日本の法務省が示した、
「イランでは同性愛を禁じる刑法があるが、立証条件が厳しいため、積極的には運用されておらず、同性愛は一般的に容認されている」
という見解は妥当なものであったと私は考えています。
by jack4africa
| 2006-10-13 00:00
| アラブ・イスラム世界

