2007年 01月 08日
団鬼六 「美少年」 |
団鬼六は、その作品の多くが映画化されているSMポルノ小説の第一人者です。
彼の書く小説は私の関心のもてない男女物のポルノ小説なので、これまでその作品を読んだことはなかったのですが、この小説はタイトルに惹かれて読みました。
この「美少年」という作品は、著者の作品としては珍しく男同士の同性愛を描いているのですが、作者が実際に体験した事実に基づく私小説だそうです。
著者は若い頃、関西のある大学で学んでいたのですが、そこで下級生の風間菊雄(名前がしゃれてますね)という関西の有名な踊りの家元の御曹司と知り合います。
著者にはそのとき、同じ大学で学ぶ女子大生の恋人がいたのですが、並みの女なぞ足元にも寄れないような美貌と色香をもつ彼に一目ぼれして、肉体関係をもってしまいます。
菊雄は普通の女よりもずっと女らしい男性で、著者に甲斐甲斐しく尽くすのですが、やがて二人の関係は大学の友人の間でも知られるようになり、著者は恋人である女子大生の久美子に菊雄との仲を問い詰められます。
また著者の知り合いの学生ヤクザで、女とセックスするだけでなく、ホモやSMも好きだと広言する山田という男に「あの美少年といっぺんヤラセてくれ」と頼まれたりします。
著者は久美子の疑いを否定し、山田の頼みを拒絶するのですが、菊雄との噂が広まるにつれて、他人からホモだと見られることに苦痛を感じるようになります。
そのうち、著者が菊雄との関係に終止符を打つことを決断する決定的な出来事が起ります。
卒業の近づいた著者は東京の就職先が決まるのですが、菊雄は著者との別れを嫌がり、著者の今後の仕事のことは自分に任せてくれといって、著者に無断で東京の就職先の会社に断りの手紙を書いてしまうのです。
菊雄の勝手な振る舞いに激怒した著者は、菊雄とついに別れる決心をし、「おかまと別れるには誰かにおかまのケツをほらせるんや。何時でも困ったときは相談に乗ってやるでえ」という学生ヤクザの山田の言葉を思い出し、山田を自分の下宿に呼びます。
前から憧れていた美少年の菊雄とヤッてもよいという著者の言葉に興奮した山田は、自分の情婦のマリ子という女を呼び、さらに著者の恋人である久美子まで呼びつけます。
そして、何も知らずに著者の下宿にやってきた菊雄を、素っ裸にして、後手に縛り、鴨居から垂れ下がる縄につないで吊り下げて、全裸で正面を向いた屈辱的な姿を晒して、女たちと一緒に散々、菊雄をいたぶるのです。
「あっ、何をするのっ」
菊雄は急に激しい狼狽を示して火照った顔面を狂おしく左右に揺さぶった。
「おかまというのはここが性感帯になってるんや」
山田は指に唾をつけて、菊雄の双臀の奥深くまさぐり出している。菊花の蕾を探りあてた山田は一気に指を突き通し、変則的な愛撫を展開させたのである。
「ああっ、それはやめて、ねえっ」
と菊雄は上ずった声をはり上げて泣きわめいた。
といった調子で、著者お得意の羞恥と屈辱のSMプレイの描写が続くのですが、本来、性行為というのは、たとえそれがSMであっても、ワンパターンの単調な行為で、それを手を変え品を変え描写して、読者を興奮させなければならないのですから、ポルノ作家というのは、相当の筆力の持ち主でないと務まらないことがよくわかる熟達の文章です。
その後の展開について興味のある方は、小説をお読みください。
後年、著者は上品な美貌の貴婦人や令嬢がヤクザな男たちの手によって徹底的に辱められ、いたぶられるSM小説を書くようになるのですが、そのようなSMの幻想の原型は、このときの山田と二人の女たちにいたぶられ、屈辱に悶え泣く菊雄の姿にあった、と告白しています。
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by jack4africa
| 2007-01-08 13:00