2007年 04月 13日
オーストラリアは住みやすい国か? |
日本人が抱くオーストラリアのイメージといえば、コアラやカンガルーなどの愛すべき動物が棲む国、国民は大らかで、ゆったりした生活を営み、都市を一歩、出れば雄大な自然が手付かずのまま残っている、といったところでしょうか。
このようなオーストラリアのイメージに憧れて、退職後の生活をオーストラリアでおくるために移住する日本人の熟年カップルも多いと聞いています。
特にバースやアデレードなどは「世界で一番住みやすい町」と喧伝されていて人気が高いようです。
しかし、本当にオーストラリアは、住みやすい国なのでしょうか?
私のHPの読者で、オーストラリアのアデレード在住の方によると、必ずしもそうではないそうです。
彼によると、日本で出版されているオーストラリアに関する本は、前述のような日本人のイメージする「おおらかな国民、安全で豊かな生活」というステレオタイプのオーストラリア像に迎合する本ばかりで、
実際にオーストラリアで生活する人間にとっての切実な問題である、治安対策 教育環境 医療水準、物価上昇などについてはまったく触れていないということです。
ここ数年、オーストラリアの治安状況は悪化していて、アデレードでも、増加する一方の犯罪に備えて、夜間には電車やバスなどの公共交通機関を利用しない、ナイトクラブのある歓楽街へは近づかない、等の安全対策は市民の常識になっているそうです。
銃器を使うアメリカ型の犯罪も増え、日本ではまだ少ない学校への放火もあとを絶たず、ドライバーのマナーの悪さや、スポーツ会場でのヤジの汚さも目立ち、「安全な国、大らかな国民」というイメージは、もはや過去のものになりつつあるとのことです。
また近年、日本でも「格差社会」が問題になってきていますが、一応 社会福祉で最低限のセーフティ・ネットがあるとされるオーストラリアでも「格差」は大きいそうです。
オーストラリアでは、所得によって居住する地域がはっきりと別れていて、どの地域に住むかで、生活水準、ライフスタイル、子どもの教育など、大げさにいえば人生そのものが左右されるといっても過言ではないそうです。
アデレードでは、中高所得者の集る地域は、低所得者が住む地域と比較して、安全、学校環境、医療施設、娯楽施設などの面で高水準の生活を享受できるそうですが、住宅価格は低所得地域の2~5倍が相場で、普通の勤労者にとっては高嶺の花になっているとのことです。
一方、低所得者の居住地域は、失業手当受給者や生活保護家庭の割合が高く、近年ではスラム化が進み 殺人、強盗、麻薬、違法売春、少年犯罪などの犯罪多発地帯となり アデレ―ドの治安,生活環境の悪化を集約した地域として知られるようになっているそうです。
アデレード郊外の貧困地域であるエリザベス市では、親子2代続けて失業手当、生活保護費受給も珍しくなく、このような貧困地域の公立学校では無料朝食サービスが普通だそうで、
地元の公立高校に入っても卒業までたどり着く者は少なく、資格も仕事も無く政府の失業手当で食いつないで行くうちに希望をなくし、犯罪に手を染めるパターンが多いとのことです。
一方 アデレードの町の東側に位置する伝統的に中産階級の多いバーンサイドのような地域には 名門校とされる授業料だけで年間150~200万円の私立小中高校がいくつかあり、これらの学校は原則的に無試験で、資産や経済的に余裕のある中産階級が代々、子女を送り込んでいるそうです。
伝統と入学待ちの長いウエイテイングリストを誇るそれら私立名門校出身者が、南オーストラリア州、アデレードの政界、官界、法曹界、経済界、医学界,教育界、宗教界など各分野の中枢を占めるそうですが、
他州も似たりよったりで一般に西洋社会の中では平等とされるオーストラリアでも、この程度の「格差」は当たり前のこととして受け入れられているそうです。
オーストラリアは70年代にそれまでの白人の移民しか受け入れない白豪主義の看板を降ろし、非白人の移民も受け入れるようになり、経済的に発展するアジアとの結びつきを強化するために、
80年代~90年代労働党政権下で、各民族の伝統を尊重する多元文化主義(マルチカルチャリズム)を掲げるようになりました。
ところが、かつてベトナム難民受け入れに反対した自由党のハワード首相が1996年に政権をとってからは、貿易市場としてアジアには関心はあるものの、学校教育でのアジア言語予算カットや欧米志向の再台頭など多元文化主義に対する逆流が起こっているそうです。
特に、2001年にNYで起こった9.11テロと、2002年に90人近いオーストラリア人観光客が犠牲になった、イスラム過激派によるバリ島テロ事件によって、オーストラリア国内のイスラム・グループにたいする風当りと警戒感は一挙に高まったといいます。
それまで非白人の移民増加を快く思っていなかった白人保守層をバックに、少数派イスラムや中東系に対して「オーストラリアの法や習慣を守らないなら自分の国に帰れ」などという露骨な少数派批判をする与党の有力政治家も出てきて、多元主義の旗色は悪くなり、
「オーストラリアのルーツは、やはり西洋社会、アジアに近くてもアジアへの仲間入りは不可能」との本音が白人層の口から聞かれるようになったそうです。
2005年12月には、シドニー郊外のクロナラ・ビーチで5000人を越す白人の若者が中東系(おもにレバノン系、アラブ系)を狙い、「レバノン、アラブは出て行け」などと叫びながら中東系の若者を次々と襲っていくショッキングな暴動が起こります。
この暴動のきっかけは、前の週にオーストラリアのシンボルともいうべき、クロネラ・ビーチの白人の救命隊員が中東系の若者に襲われた事件だといわれますが、暴徒化した若者は付近の自動車100台余り破壊し、
16人が逮捕され、阻止に入った警官を含め25人以上の負傷者を出すなど、近年のオーストラリアでは、まれな人種暴動となったそうです。
というようなわけで、オーストラリアは決して住みやすい国ではないとのことですが、社会格差の拡大や国内の少数民族の問題などは、我々日本人にとっても他人事ではないと思いますね。
by jack4africa
| 2007-04-13 00:21
| 海外生活&旅行

