2008年 04月 01日
愛子とピーコの「あの世とこの世」(1) |
これは、今から30年以上前に北海道の浦河というところに山荘を建てたことをきっかけに霊媒体質になり、霊が引き起こす様々な怪奇現象に悩まされるようになった小説家の佐藤愛子さんと、霊を見たり感じたりする霊能力を持つタレントのピーコの対談をまとめた本です。
現在、世の中はスピリチュアルブームだそうで、テレビには自称霊能者が沢山、出てきて身の上相談なんかをやっていますが、この対談本はそのような流行に便乗した企画ではなく、
それとは逆に、エンターテイメント化されたテレビのスピリチュアル番組や、そのような番組に出演している江原ヒロユキ氏に代表される霊能者を批判する内容になっています。
そもそも、江原ヒロユキ氏が世に出たのは、佐藤愛子さんとの共著、『あの世の話』を出版したことがきっかけでした。
佐藤愛子さんは昭和50年、51歳のときに誘われて出かけた北海道旅行で、日高地方の海に面した漁業と牧畜の町、浦河に案内され、丘に登って海を一望の下に眺めた途端、そこが気に入り、発作的に家を建てることを決心するのですが、
建ち上がった家に住んでみると、夜中に屋根の上を誰かがノッシノッシと歩く音が聞こえたり、雨も降っていないのに雨がザーザー降る音が聞こえるといった様々な怪奇現象に見舞われるようになります。
恐くなった彼女は、霊能者としても知られていた歌手の美輪明宏さんに相談します。
美輪さんが霊視すると、佐藤さんが家を建てた場所はアイヌの古戦場だったところで、成仏できていないアイヌの霊がうようよいることがわかります。
また佐藤さんにも成仏できていない先祖の霊が何体も付いていて、お祓いしないと健康を損ね、ついには死んでしまうといわれます。
佐藤さんはそれまで人間は死んだら無になると考えていて、あの世の存在も霊の存在も信じていなかったそうですが、その頃から突然、霊の存在を感じる霊媒体質になり、
講演旅行で泊まったホテルでもラップ音と呼ばれる「ピシッ、パシッ」という霊の立てる音がひっきりなしに聞こえるようになったりして、否応なく霊の存在を信じるようになります。
そして、北海道の山荘にいるアイヌの霊と先祖の霊を成仏させるために、美輪さんに教わったお経を毎日、あげるようになるのです。
この一連の事件の顛末記は、昭和62年に『こんなふうに死にたい』というタイトルの本として出版されますが、あの世とか霊の存在を信じない人間が読むことを想定して、起こった事実だけを淡々と客観的に記述しているのですが、
やはり一流小説家だけあって文章に説得力があり、私はこの作品を読んであの世とか霊が存在することを確信するようになりました。
元々、私の場合、霊感のようなものはないのですが、なぜか子供のときから人間は死んで肉体は滅んでも魂は生き残るという思い込みというか、実感のようなものがあって、この本を読んで、その子供の頃からの実感が間違ってはいなかっことがわかって嬉しくなったのを覚えています。
佐藤さんが必死でお経をあげたおかげで、七年ほど経ってアイヌの霊が起こす騒ぎは下火になるのですが、それは休止に過ぎず、しばらくするとまた霊による騒ぎはぶり返し、北海道の山荘だけでなく、
佐藤さんの住む東京世田谷の家でも不思議な怪奇現象が頻々と起こるようになり、佐藤さん自身も膝が痛くなったり、指の腱鞘炎が悪化したりする霊障 (霊が引き起こす障害) に見舞われます。
そこで佐藤さんは解決を求めて様々な霊能者を訪ね歩くのですが、その中に若き日の江原ヒロユキ氏がいたのです。
佐藤さんが江原氏に始めて会ったときは、彼はまだ二十代の霊能者の卵で、純朴で謙虚で欲のない青年だったそうです。
佐藤さんは、江原氏から低級な霊に憑依されるのは、その人間の波動(精神性)が低いからで、そのような霊に憑依されないようにするためには、自分の波動を高める必要がある。そのためには物質的な欲望を抑えるようにしなければならないと教えられます。
ところが、彼女にそう教えた江原氏自身が、テレビに出演して人気が出るようになってからは、一種の教祖のように振る舞うようになり、見るからに高価そうな着物をとっかえひっかえ着てテレビに現れて、
幸せになるためには物質的な欲望を捨てなければいけないという一番、大切なことをいわずに、番組のゲストである芸能人のオーラが赤いとか黄色いとかどうでもいいようなくだらないことしかいわなくなってしまうのです。
それで佐藤さんは彼に対して批判的になるのですが、江原氏に群がる若い女性たちについても、自分で人間性を高める努力をなにひとつしようとしないで、江原氏に頼って簡単に癒しを求める依存症にかかっていると批判しています。
江原氏については、だいぶ前から一部の週刊誌でバッシングが続いていて、テレビ番組で出演者を霊視する前にスタッフがその出演者にプライベートなことをいろいろと尋ねておいて江原氏に伝え、本番になってから江原氏が霊視して初めてわかったみたいに、「あなたってこういう人ですね」とか言うなどという噂が流れています。
それで、あれはインチキ霊能者だと悪口を叩く人もいるみたいですが、私は佐藤さんの本を読んでいるので、彼はインチキではなく、本当に霊能力のある人だと思っています。
ただ、これは江原氏自身も昔、いっていたことですが、霊能力というのは、悩んでいる人を救うために神様が特定の人間に与える能力であって、霊能力を与えられた人間がそれを金儲けの手段にしてしまうと、神様は怒ってその霊能力を取り上げてしまうのだそうです。
そのため、心ある霊能者は必ず、別に職業をもってそれで生計を立てていて、相談者からは謝礼を受け取らないといいます。
逆にいえば、金を要求してくる霊能者は、まずインチキだとおもって間違いないということになります。
また霊能者も人間なので体調の良いときと悪いときがあって、体調が悪いときはよく霊視できないということもあるそうです。
ところがテレビ番組だと「今日は体調がよくないので霊視できません」とはいえないので、そういうときのためにあらかじめ相談者のプライベートなことを調べておくというケースがあるのかもしれませんが、いずれにせよ、それで金儲けをしている以上、霊能者としては失格ということになります。
私は現在みたいに江原氏がバッシングを受ける前に彼の本を読んだことがあるのですが、立派なことが書いてあるものの、もうひとつ心に響きませんでした。
もし、同じことを美輪さんの口から聞けば、もっと胸に沁みるんじゃないかと思います。
なぜかというと美輪さんの言葉は他人からの受け売りではなく、自分の人生体験に裏打ちされていて、その人生体験たるや、若僧の江原氏などとは較べものにならないほど深くて濃いからです。
結局、最終的にものをいうのは、その霊能者の人格というか、人間性だと思いますね。
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by jack4africa
| 2008-04-01 00:13

