2008年 10月 20日
ブードゥー教と同性愛 |
ブードゥーの儀式 ハイチのブードゥー、キューバのサンテリア、ブラジルのカンドンブレ、マクンバなど、カリブ海や南米諸国には、
アフリカからこれらの地域に奴隷として連れて来られた黒人の子孫によって信仰されている、アフリカの部族宗教とキリスト教が習合してできたアフロ・アメリカン宗教と呼ばれる一群の民間宗教が存在します。
これらアフロ・アメリカン宗教は、儀式で信者が歌い、踊っている内にトランス状態に陥って、自然界や霊界に数多く存在する神格的な精霊に憑依(ひょうい)されるという共通の特徴をもつことから、憑依宗教とも呼ばれています。
これらアフリカにルーツを持つ民間宗教は、同性愛者を拒否せず、同性愛者であっても自由に儀式に参加できます。
その結果、プロテスタントやカトリックの教会で受け入れられない同性愛者たちの多くがこれらの民間宗教に救いの場を求めて、信者になっているといわれています。
ハイチのブードゥーやブラジルのカンドンブレの場合には、儀式を主宰する司祭や神霊が憑依する霊媒に同性愛者がなることも多く、
このような同性愛者の司祭が主宰する儀式には自然と同性愛者の霊媒や信徒が集るようになり、儀式の会場はさながらゲイバーやゲイクラブのような雰囲気になり、同性愛者の社交場と化すそうです。
☆ ハイチのブードゥー
ハイチは、コロンブスが最初に到着して、黄金の国「ジパング」であると誤解した島であるエスパニョーラ島の東の3分の1を占める国です。
エスパニョーラ島はコロンブスに征服されて、スペインの植民地になりますが、その後、現在のハイチに相当する東部の3分の1がフランスに占領され、フランスの殖民地になります。
コロンブスが到着したとき、エスパニョーラ島には、先住民のアラワク族が住んでいましたが、彼らはスペイン人による虐殺や、スペイン人が島に持ち込んだ疫病のせいで絶滅してしまいます。
スペイン人はこの島でサトウキビの栽培をはじめるのですが、先住民のアラワク族が絶滅してしまったため、サトウキビ農園で働かせる労働力が不足し、それを補うためにアフリカから黒人奴隷を輸入するようになります。
サトウキビの栽培は、フランスの植民地になったサントドマンゴ(後のハイチ)で特に盛んで、サントドマンゴはやがて世界最大の砂糖の生産地になります。
サトウキビ産業の発展に伴って、サントドマンゴに輸入される黒人奴隷の数も増え、1789年には、全人口52万人の87%に相当する45万人に達したそうです。
サントドマンゴに連れて来られた黒人奴隷は、その多くが西アフリカの出身ですが、故郷のアフリカ大陸から切り離され、無理やりカリブの島に移住させられた彼らが、故郷のアフリカを偲び、
アフリカ人としてのアイデンティティーを失わないために信仰したのがブードゥー教の基になった西アフリカの部族の伝統的な宗教だったといわれています。
このアフリカ伝来の宗教であるブードゥー教はやがて、黒人たちが白人に抵抗する手段となっていきます。
サントドマンゴでは、プランテーションでの過酷な労働や白人農園主の残虐な仕打ちに耐えかねて農園を逃げ出す、
マルーンと呼ばれる逃亡奴隷が続出するのですが、彼らは森の中に隠れ棲んで、ブードゥーの秘儀を行なって白人を呪ったといわれています。
やがて逃亡奴隷のブードゥーの儀式で司祭を務める黒人がリーダーとなって、黒人奴隷の反乱を煽動、指揮するようになり、最終的にはこの黒人奴隷の反乱が中南米の植民地で最初の黒人による独立国家、ハイチの建国に結びつくのです。
ハイチの黒人奴隷は、フランス本国の政府が制定した黒人奴隷に関する法律、「黒人法典」によってカトリックへの改宗を強制されるのですが、
彼らはブードゥーの神々をカトリックの聖人と同一化させることで、表面的にはカトリックの信者を装いながら、密かにブードゥーを信仰し続けます。
その結果、現在ではハイチの国民の100%がブードゥー教信者で、90%がカトリック教徒であるといわれるほど、二つの宗教の習合が進みます。
それでも、ブードゥー教がハイチで、憲法によって正式に宗教として認められるには、1987年まで待たなければなりませんでした。
ブードゥーの儀式は、信者とその肉体に憑依するロアと呼ばれる神格化された精霊との交流が中心になります。
信者たちは憑依儀式によってロアを自分の体内に受け入れ、ロアと一体化して、みずからが神になることで、自分の霊性(人間性)を高めるのです。
ブードゥーの儀礼を主宰する司祭は、男性の場合はウンガン、女性の場合はマンボと呼ばれます。
ウンガンはブードゥーの儀式を主宰することに加えて、薬草を使って病気を治す薬草医として働いたり、金をもらって特定の人間を呪う呪術師として働くこともあります。
ブードゥーはハイチ移民を通して、アメリカ合衆国にも伝わるのですが、アメリカのブードゥーは病気の治療や呪術や魔術を行なう秘教的、密教的な側面が強く、
歌手のマイケル・ジャクソンがアフリカ一と評判の高い呪術師に大金を払って、自分が嫌っている映画監督のスティーブン・スピルバーグたちを呪ってくれるように頼んだという有名な話があります。
ブードゥーの儀式では、信者はロアに憑依されるのですが、信者であればだれもが憑依されるわけではなく、様々な修行を積んだウンシと呼ばれる信者だけがロアに憑依される資格をもつといわれています。
大半の信者は特定のロアを自分の守護神に定めて信仰し、そのロアと儀式を通じて交流をはかるのですが、男性同性愛者が守護神として信仰するロアには女神が多く、その中では特に愛と繁栄の女神であるエルズェリ・フレイダが有名です。
エルズェリ・フレイダはとても女らしく、コケティッシュな神霊で、彼女に憑依された人間は、絹のローブや指輪などで身を飾り、香水を身にふりかけ、男性にたいしてお尻を振ったり、ながし目をなげかけたりして挑発し、男を誘うそうです。
マリリン・モンローみたいな神霊ですね(笑)
ホモの場合、マリリン、もといエルズェリ・フレイダに憑依されると、ほかの信者の前で、オネエを全開にして女として振舞い、男を誘うことができるわけで、ホモがこのロアを守護神にしたがるのもうなずけます。
あと30年、若けりゃ、私もやってみたいです(笑)
☆ ブラジルのカンドンブレ
ブラジルのアフロ・アメリカン宗教には、カンドンブレやウンパンダがあり、両者を総称してマクンバと呼ぶこともあります。
ブラジル北東部のバイア州で盛んなカンドンブレは、この地に連れて来られた黒人奴隷の多くが西アフリカのヨルバ族の出身であったことから、ヨルバ族の宗教的伝統を基にカトリックの要素が加わってできたといわれています。
ブードゥー教のロアに対応する、信者に憑依する神格化された精霊はオリシャと呼ばれます。
カンドンブレのオリシャはブードゥーのロアと同様、カトリックの聖人たちと同一化されています。
カンドンブレの憑依儀式が行なわれる場所はテヘイロと呼ばれ、憑依儀式を主宰する司祭や神霊が憑依する霊媒は、アフリカの母系社会的伝統に従って、従来は女性が務めていました。
ところが1940年代にカンドンブレの儀式で、アフリカ伝来の神霊であるオリシャに加えて、カボクロと呼ばれる先住民のインディオの神霊も信仰されるようになると、男性の司祭が登場するようになります。
カンドンブレの男性司祭に特徴的なのは、彼らの殆ど全員がビシャ(オカマ)と呼ばれるアナル・セックスでウケ身を務めるホモであることです。
またビシャが司祭を務める儀式では、神霊に憑依される、修行を積んだ信者たちもやはりビシャで占められ、彼らは女装して踊りながらトランス状態に入り、神霊に憑依されるそうです。
カンドンブレの司祭や霊媒にビシャが進出するようになった理由はよく分かっていないようですが、
みずからを「女性的男性」とみなすビシャにとって、カンドンブレの儀式が女装して、女として振る舞う絶好の機会になっていることはたしかでしょう。
ブードゥーの場合と同様、彼らは女装して踊り、女性の神霊に憑依されて、女性の神霊と同一化することで、「完全な女」になるという満足感を味わうことができるのです。
また美しく着飾って儀式で踊ることで、儀式に参加している男たちを誘惑するチャンスが得られるという魅力も大きいようです。
ビシャが司祭や霊媒を務めるテヘイロに参加する信者の大半は同性愛者で、異性愛者は同性愛者にみられることを嫌って、ビシャの主宰する儀式には参加しないといわれています。
儀式に参加する同性愛者には、ウケ身のホモであるビシャとビシャからオーメン(本物の男)と呼ばれる、アナル・セックスでタチ役を務めるホモの2種類がいるそうです。
ただし、実際には「本物の男」だったはずなのに、別のオーメンにオカマを掘られていることが判ったり、
ノンケの若い男がビシャを誘惑して金を貢がせる目的で紛れ込んでいたりと、ホモとノンケ、ウケとタチの区別はみかけほどはっきりせず、かなり曖昧だそうです。
ブラジルの男性には元々、バイセクシュアルが多いですからね。
最初は東北部のバイア州に多く住む黒人たちが信仰する民間宗教だったカンドンブレですが、
最近はサンパウロなど大都会に住む中産階級の白人ゲイの間にも広まっていて、彼らが参加する儀式の場であるテヘイロは、殆どゲイの社交場と化しているそうです。
カンドンブレにおける男性同性愛者の守護神は、カトリックの聖人、聖バルバラと同一視される女神、イアンサンです。
イアンサンは、シャンゴという男の神様の妻ですが、ときどき性転換して男になって、夫のシャンゴを犯すそうです。
ブラジル映画の『カランジル』で、エイズ予防のキャンペーンで刑務所を訪れたボランティアの医師が、診察を受けにきた女装の男娼だった囚人の胸がシリコンで膨らんでいるのをみて、
「下の方も手術してるのかい?」
と訊くと、その若い男が、
「ううん、下は手術してないわ。だって男たちはみんなベッドの中ではオンナになりたがるんだもん」
と答えるシーンがありますが、
ブラジルには、このような女装の男娼が多数、存在して、彼らを買う男性の多くは、ベッドではウケ役になって、まだペニスが付いている彼らに犯されることを好むそうです。
ラテンアメリカの男はマッチョ志向が強いそうですが、ときどき、ベッドでオンナになることで、マッチョを演じるストレスを発散しているのかもしれません。
参照ウェブサイト:
Homosexuality in Vodou by Mambo Racine Sans Bout
(http://members.aol.com/roots125/gayclergy.html)
参照文献:
ヴードゥー教の世界、立野淳也
Male Homosexuality and Afro-Brazilian Possession Cults by Peter Frey
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by jack4africa
| 2008-10-20 12:20

