2008年 11月 18日
エルサレムの男湯 |
お店の名前はTURKISH BATH、文字どおり読むとトルコ風呂ということになりますが、トルコやアラブ諸国にあるトルコ風呂(ハンマーム)ではなくて、
言葉で説明するのは難しいのですが、オリエンタル風の造りのゲイ専用バスハウスです。
ここの特徴はなんといっても客層がバラエティーに富んでいることです。
元々、エルサレムの旧市街は、アラブ人やユダヤ人、アルメニア人やギリシャ人など雑多な民族が共存しているのですが、
そこに世界各地からやってきた観光客が加わって一年中、万博状態で、この店の客層もそのコスモポリタンな雰囲気を反映して実に多種多様で見ていて飽きませんでした。
迷彩服を着て自動小銃を抱えたイスラエル兵が入ってくるのをみたときは、一瞬ドキッとしましたが、別にアラブゲリラを捜索しにきたわけでなく、勤務の合間にサクッと抜きにきただけみたいでした。
さらに、もみあげを三つ編みにした、特別信仰心が厚いことで知られるアビと呼ばれる正統派ユダヤ教徒の若い男までいて、
「ユダヤ教ではホモセックスは禁止じゃなかったの?」
と聞きたくなりました。
ここで私はフェリーニの映画、『サティリコン』で主役の青年2人に愛される美少年そっくりの子に出会いました。
あんまり似てるので、もしかしたら本物ではないかと思ってじっと見てたら、向こうが気がついてニッコリ笑いかけてきたので近づいて話しかけたのですが、
サティリコンのことを聞くと「しょっちゅう間違われるんだよ」と嬉しそうに否定しました。
彼はイスラエルで生まれ育ったユダヤ人で、数年前からオランダのアムステルダムに移住していて、そのときはたまたまイスラエルに里帰りしているところだということでした。
私はなぜか彼に気に入られてしまい、一緒にバスハウスを出たあと、芸術家がよく来るというカフェに連れて行かれて、そこで散々、イスラエルの悪口を聞かされました。
彼はイスラエル人であるにもかかわらず、イスラエルが大嫌いで、それでオランダに移住したのだそうです。
特にキブツ(集団農場)については最悪の共産主義だと口を極めて罵っていました。
ホモの若い子にとってああいう共同生活はツライものがあるみたいです。
そのあと、どうしてもとせがまれて彼の家に行ったのですが、そこは日本の公団住宅並みの3DKの狭いアパートで、彼の両親と弟から思いっきり冷たい視線で迎えられてしまいました。
彼はそんなことには慣れっこになっているのか、家族を無視して私の手をとって自室に連れて行き、私も図々しくあがりこんで、結局、朝まで一緒に過ごしてしまいました。
このTURKISH BATHというお店、最近、エルサレムに行った人の話によると、もうなくなっていて、現在はエルサレムにはゲイサウナは一軒もなく、テルアヴィブにあるだけだそうです。
「世界OTOKO紀行」
by jack4africa
| 2008-11-18 00:25